バンブーロッド取扱いの注意点

はじめに

バンブーロッドは一般に繊細でデリケートなものと思われています。

確かにカーボンロッドやグラスロッドと比較すると強度は若干劣るかもしれませんが、釣竿として使う分には十分な強度を持っています。なにしろ何百年も釣竿として使われてきた素材なのですから。

ちゃんと使えば、どんなに大きな魚が掛かっても折れる事はありません。


気に入った道具はずっと永く使いたいものです。

大切な愛竿を末永くお使いいただくために、守っていただきたい事柄をまとめました。


バンブーロッドの弱点

それはずばり、ティップ(竿先から1ftくらいの間)とフェルール(とブランクの接続部分)です。ほとんどの破損はこの2か所で発生します。特にティップの折れがほとんどを占めます。フェルール部の破損はロッドの作りに問題がある場合もあります。

しかしこれはカーボンロッドでも同じことです。釣竿は細くて弱い穂先が一番折れやすいのは当然ですね。

とはいえ、竹であれカーボンであれ、どんなに大きな魚が掛かっても、正しく竿を操作すればティップは折れません。 

たいていは「うっかり」やらかしてしまうんです。


ティップの折れを防ぐために

最初に言ったように最大の弱点であるティップの弱さ、そこを使い手がいかにカバーするか。それ次第でバンブーロッドの寿命が決まると言っても過言ではありません。

キャスト時、ファイト時、ランディング時、どんな時もティップに負荷が集中するような動作は避けましょう。

また折れないまでも、限界を超えて曲げられたロッドは元に戻らず曲り癖がついてしまう場合があります。 この限界点がバンブーはグラスなどより確かに低い。

曲り癖はビルダーの手により加熱して力を加えることで矯正することができますが、加熱は6本のスプリット(竹片)を結着している接着剤を劣化させ、結果的にはティップの強度を低下させます。ですから少々の曲り癖にはあまり神経質にならない方がかえってロッドのためだと私は思うのですが・・・。

それに、癖が付いても逆に曲げていればけっこう直ってしまうものです。

曲り癖はバンブーロッドを扱い慣れているかどうかの目安でもあります。癖が付かない、ロッドに優しい扱い方を身に付けましょう。


ティップを守るための作法

・ティップに対して鋭角方向に引く力が加わるとティップ部だけに負荷が集中するので、そうならないように注意しましょう。

例1、 ラインとリーダーの結び目がトップガイドに引っかかってラインが出ない時、手でリーダーを引っ張らないこと。

例2、 キャストの際、ロッドに負荷が掛かっている段階でティップをキャスト方向に突き出すような動作をしないこと。

例3、 アワセの際、ロッドを後方に突き上げるような動作をしないこと。アワセはロッドを立てすぎず、バットを跳ね上げるようにしましょう。

例4、 掛けた魚を寄せる際、ロッドを立てすぎないようにしましょう。垂直より後方に倒すのは完全にNGです。荷重はロッドのバット部分で受け止めましょう。(写真参照)

魚を寄せる際、ロッドの弾力を最大限に活かせるティップとバットの角度は90度と言われています。また、ロッドは立てるより横に寝かせたほうが、ラインが弛まずバラシ防止になります。

例5、 ランディングの際はティップに重さが集中しないように気をつけましょう。最終段階でティップから出ているリーダーの長さは長すぎず短かすぎず。スムーズにネットインできない人はそこが身についていないと思われます。ロッドハンドを体の後方へ伸ばし、ランディングネット(ネット使用を推奨します)をできるだけ前方へ突き出し、腰を落とします。以上のような体勢を取り、ティップだけが極度に曲がるような状態を防ぎましょう。また手首を返し、リールが後方へ向くようにすれば、通常とは逆方向にロッドがカーブするので、曲り癖を防ぐ効果があります。 曲がってしまった竿も、逆に曲げると直ったりします。

(※下の写真参照。ただしネット未使用なので70点です)

例6、 ネットインしたら速やかにラインをゆるめて魚の重さがティップに掛からないようにしましょう。

例7、技術指南書のイラストにありがちな、ロッドをぎゅーっと引き絞るような ボウ&アローキャストはやめましょう。ロッドの復元力だけで飛ばそうとせず、ロッドを小さく振ってリーダーやラインの重さでキャストすればロッドを曲げる必要はありませんし、その方がよく飛びます。

・岩や部屋の天井などをうっかりティップで突かないように気を付けましょう。

・樹にフライが引っかかった時に竿先で外そうとしないこと。

・根掛かりの際に無理にロッドをあおったりしないこと。

・どこかにロッドを置く時、立てかける時、ティップが曲がるような置き方をしないこと。

・アルミチューブに仕舞う時、バットセクションを逆さ向きに入れると、太いグリップに

 押されて曲がり癖が付く可能性があります。メーカーから特に指定が無い場合は、

 バットセクションはフェルール側を上に。


フェルール部の破損を防ぐために

メタルフェルールそのものが壊れることはめったにありません。(竹フェルールはデリケートで扱いには注意が必要です)

フェルール部の破損というのはほとんどが前後のブランク接着部分の折れです。この部分のブランクに限界を超える大きな負荷が掛かった時には折れます。

大きな魚が掛かってもロッドはそう簡単に折れるものではありませんが、瞬間的に力が加わると弱い部分に負荷が集中してあっけなく折れる場合があります。

折れた原因が、ロッドのテーパー設計に無理があったり、サイズの合わないフェルールを付けるために竹のパワーファイバーを削りすぎた、火入れが強すぎて竹が脆くなっていた等という例もあります。

もし幸運にも(?)貴方に、ロッドの限界を超える大物がヒットして、貴方が上手にファイトした場合、ロッドが折れるとしたら、それはグリップに近いバット部分でしょう。

その時は素直に敗北を認め、大鱒の素晴らしいファイトを称え、賞賛しましょう。

(でもロッドが折れる前にラインを繰り出して持久戦に持ち込んでくださいね)


フェルール部を守る作法

・根掛かりやアワセの際、ロッドを大きくあおるなどの動作は避けましょう。

・キャスティングの際、ロッドを力任せに振り回すのはやめましょう。フライキャスティングは力でやるものではありません。

・ディスタンスの限界性能を試そうなどと考えないでください。無理なく振れるライン長が、その竿の適正なリミットというものです。実用距離以上に飛ばしても、ロッドの寿命を縮めるだけです。渓流用のロッドは元々フルラインを飛ばすようには作られていません。

・キャスティング練習は飛距離にばかりとらわれがちになります。バンブーロッドでは寿命を縮める結果になりますから使用せず、練習にはカーボンロッドを使うのが賢明です。

・差し込む前に布で拭いてきれいにしましょう。オス、メスとも汚れや砂が付いてないかチェックしましょう。

・差し込みが固い時、無理しないこと。無理に差し込むと抜けなくなります。メタルフェルールは全部滑らかに入るのが正常です。汚れや酸化が原因であったり、温度変化で収縮したりして入りにくいこともあります。毎回嵌合部(かんごうぶ)をきちんと掃除して薄くロウを塗布してから、ほどほどの力加減で差し込みましょう。メタル以外の竹フェルールやスピゴットタイプなどのタイプは通常、完全に奥まで挿入できず、若干の余裕を持つようにすりあわせしてあります(長年使用してすり減った場合の予備代を取ってあります)

・差し込みが固いと感じるときも緩いと感じる時もロウソク(お財布に余裕のある方は専用のフェルールワックスがあります)を塗るとよいです。日常のメンテナンスでもロウを塗っておくとフェルールの摩耗やメタルの酸化を防いでくれる効果があります。当たり前ですが塵や砂が付いたままの古いロウは布で拭いて塗り直しです。機械油や鼻の脂、CR-556はおすすめしません。

・フェルールが濡れたままで繋ぐのはNGです。使用後は水気を拭き、乾燥させましょう。

・繋ぐ時にトップセクションとバットセクションの向きが真っ直ぐでなかった場合、けっしてひねってはいけません。一度抜いて改めて真っ直ぐに差し込みましょう。ひねるとブランクが破損するおそれがあります。スプリットの接着はねじる力に弱いです。継ぐときも抜く時も絶対ひねってはいけません。

・継ぐ時、抜く時、手が滑ってガイドを破損しないように持つ位置を気を付けましょう。滑り止めのグリッパーを使うと良いです。(100均で買えます)

・釣りの最中は時々、フェルールがゆるんでいないかチェックしましょう。

・竹フェルールを抜く際には一直線に引き抜きましょう。斜めに力が入っているとメスの口にオスの先端が当たって破損するケースがあります。

・竹フェルールの強度は、巻き固めた糸で保たれています。竿を使っているうちにメスフェルールの口付近の糸とコーティングが白く浮いてくることがあります。この経年劣化は構造上避けられません。少々糸が浮いても使用できますが、進行が止まらないようであれば、糸巻きとコーティングをやり直した方が良いでしょう。フェルールが緩くなってクラックがコーティング表面まで行ったら限界です。完全に壊れる前にメンテナンスに出してください。


水濡れについて

・「雨の日にはバンブーロッドは使わない」と言う方もいますが、ブランクの塗装に深い傷が無ければ、ロッドが濡れる事をあまり気にしなくて大丈夫です。フェルール部ラッピングにクラックがある場合や竹フェルールは水に浸けない方がいいです。要は乾燥させることです。ディッピングのみでコーティングを仕上げた竿はラッピング部分にクラックがあると水が竹まで浸透する可能性があります。

オイルフィニッシュのロッドは防水性能が低いので、あまり濡らさない方がいいかもしれません。

使用後はリールシートキャップ部に入った水をしっかり吹いて飛ばし、タオルでロッドの水気を拭いてからチューブに仕舞ってください。帰宅後はチューブから出して乾かしてください。その際は平らな場所に置くか、ロッドソック(竿袋)に入れたまま吊るしましょう。長時間、斜めに立てかけるのは曲り癖が付く恐れがあります。

・濡れたまま車に積みっぱなし、はNGです。


その他

・新品ロッドの樹脂塗装や接着剤は、実用強度には達していますが、まだ完全に硬化が終わっていません。(ウレタン樹脂の完全硬化は半年ほどかかると聞いています)しばらくは慣らし運転のつもりで丁寧に扱った方がいいでしょう。

・ロッドブランクの傷は撮影時の置き傷というケースが大半です。撮影で河原に置く時はギザギザの岩に気をつけましょう。(あとは転んだり落したり、でしょうか)

・ロッドを地面に置いてうっかり踏んでしまう事故が後を絶ちません。魚と一緒に撮影する時は別として、準備や休憩時などはどこかに立てかけた方が無難です。

・河原で転んだとき、ロッドを握りしめたままだとロッドも自分も危険です。咄嗟には難しいかもしれませんが、ロッドを放した方がマシな結果になるでしょう。

・リールフットがリールシートにフィットしない場合、無理してそのリールを使わない。

・キャスト中にフックの先がブランクに当たらないように(シンカーも)それと竹竿は深く曲がるので、目の前の岩を叩かないようにご注意ください。

 ニンフのリグはサイド気味のワイドループでキャストするとトラブルを避けられます。

・夏の車内に放置、炎天下の河原に置く、室内の暖房機のそば等、熱くなるのはNGです。止む終えず車内に残す場合もチューブの上に毛布を掛ける、窓を少し開けるなど、断熱対策を講じましょう。

・日光の紫外線も釣りの最中以外は避けましょう。紫外線は竿の素材を劣化させます。

・超低温ではブランクの強度が低下するそうです。厳寒期は使わない方がいいでしょう。

・岩やフックの先が当たってブランクの塗装に傷が付いてないか、各部パーツに損傷がないか、使用後に点検しましょう。ブランクの傷が竹まで届いている場合は放置せず、ご相談ください。傷の部位がどこであるかと竹への損傷の有無により、ウレタン塗料のタッチアップで済む場合と補強する場合に分かれます。木材用油性ウレタン塗料をホームセンターで入手すれば、ちょっとした傷なら自分で補修できます。

 ※ラッカー、プラカラーは絶対に使用しないでください。溶剤が強すぎて元の塗装を傷めます。

・マルチピースロッドを継ぐ時は先から順に。抜く時は手元から順に。これはフライロッドに限らず釣竿の原則です。

・チューブにロッドを入れる際は、ガイドがチューブの縁に当たって破損しないように気をつけましょう。(指で輪を作ってチューブの縁をカバーするとよい) チューブの中に勢いよく落としてフェルールにダメージを与えないように注意しましょう。


お手入れ方法

一般的なウレタンコーティングの竿の場合(鱒幸竿もそうです)、湿らした布で汚れを拭き取り、後は乾いたタオルで優しく拭いてください。それだけです。

塗装部分にアルコール、シンナー、溶剤を含むもの、油脂、コンパウンドは使用禁止です。

メタルフェルールに研磨剤は厳禁です!ゆるゆるになる恐れがあります。

メタルフェルールはメス穴の中も綿棒などできれいにして、外は布で拭きます。

嵌合部にはロウを塗っておきましょう(使用時には拭き取る)

コルクの手垢汚れは台所洗剤と柔らかいスポンジで洗えばきれいになります。ベビーオイルを塗るとコルクの保護になるという情報がありましたが、私はまだ試していません。


以上は私や諸先輩方が経験から学んだ事です。

たくさんあって、ご面倒に思われたかもしれませんが、カーボンロッドでも注意点は同じようなものです。

道具は大切に扱えば、長持ちしますし、一層愛着が湧くものです。

どうか末永く鱒幸竿をご愛用ください。 

鱒幸

フライフィッシングで日本の渓魚を味わい深く釣るための竹竿、鱒幸竿のページです。

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